市村しげの『Time Drops』

1月18日(金)~2月29日(金)

ベイスギャラリーでは市村しげの展を開催中です。

ニューヨーク在住のアーティスト・市村しげのの個展「Time Drops」展を開催いたします。既に1997年、全米最大のアートコンペティションの一つ「テキサス・ナショナル」でアジア人として初入賞(第2位)を果たし、2002年には芸術基金よりフェローシップを受賞、その後ニューヨークを中心に多数の個展、グループ展を果たしています。2005年当画廊で初の日本での個展を開催、今回は2度目の発表となります。

銀色という無彩の上に、同色で頑ななほど規則正しく打たれたドットはその無機質のゆえに手技を経たものとは思えず、遠望すれば冷たい板の展示と誤解されることさえあるかもしれません。しかしそのドットが1つ1つ作家の手から絞り出されたうえ、画面に落下されていることに気が付くと、人の手が生んだ微細な差異と濃い息遣いは、私たちを軽い惑乱の中に強く誘い込んでしまうのです。さらに一つのドットが並列し、時に絡み、規則を成し、ついには律動さえ開始するのを見ると、その個と全体のありように市村が惹かれていることを知らされ、更にその鼓動に共々身をまかせていることに気が付かされます。 それは人を包囲する時間のありように似て、刻々たる秒針の運びと一日を終えた大きな時間の経過の感触は、市村作品の前で私たちが不思議な親和を感じてしまう理由を解く大きな鍵であるかもしれません。一見無機質な作品とはいえ、市村作品を前にすると大きな沈静に包まれるのは作品がそんな人の本質に根ざしたものだからと思うものです。

作品のタイトルを大きく「Time Drops」と名付けさらに自らの作品の本質を問いかける本展は静かな時間の落下を改めて感じる機会を作り出しています。

また、この展覧会を機に今までの主要作品をまとめた画集をグラムブックスより刊行予定です。作品は言うまでもなく、彼のニューヨークでの暮らしを伝える写真、文章も加え、かの地のTime Drops を楽しんでいただける本をお届けできると思います。

市村しげの略歴
展示作品(一部)

One and Whole
2007
工業用塗料/キャンバス
91x91cm

Relation
2007
工業用塗料/キャンバス
91x91cm

Ripple #8
2007
工業用塗料/キャンバス
91x91cm
関連書籍
市村しげの『Time Drops』(仮)
グラムブックス
25x21.5cm / 約90ページ.
(2008年春刊行予定)